伊良部島・佐良浜(さらはま)集落

急斜面に建つ異国風の家々-佐良浜集落
急斜面に張り巡らされた階段と異国風の町並み

2015年に伊良部大橋が開通するまで、伊良部島の玄関口となっていた佐良浜(さらはま)魚港。
港の背後は小高い丘になっていて、その急斜面にはりつくように家々が立ち並んでいます。

江戸時代中期に海をはさんだ対岸にある池間島から渡ってきた人々が作った集落で、現在の伊良部字池間添と前里添の二つの集落を総称して佐良浜(さらはま)と呼んでいます。

漁港を臨む急斜面に建てられたカラフルでどこか異国風な家屋、その中に張り巡らされた迷路のような路地と階段。
沖縄ではあまり目にすることがない特徴的な町並みで、初めて訪れた時の印象は、「異国に迷い込んだみたい」。
元々路地歩きが大好きなのですが、佐良浜集落の魅力にすっかりはまってしまいました。

車は入れないのでひたすら急な階段と坂道を登ったり降りたり、なかなかハードな路地歩き。
細い路地のすぐ脇には住民の方の生活があります。それだけにプライバシーを損なわないように、警戒されるような行動をしないように気を使います。

地図もなく適当に歩き回っていますが、訪れる度に新たな発見があって楽しみが尽きません。
路地にはみ出した岩-佐良浜集落
路地に溶け込むガジュマルや琉球石灰岩

集落の中には、ガジュマルの木や大きな琉球石灰岩が狭い路地や階段に溶け込むようにそのまま残っています。
こうした自然と一体化したような路地は他では目にできない光景。

もとより、沖縄ではガジュマルや大きな岩は信仰の対象として拝所となっている事が多いのですが、佐良浜集落には9箇所もの拝所があるそうです。
航海の安全を願う漁師町ならではの信仰心の現れなのかもしれません。

坂道の途中、「こんなところにも道が、、、」と思うような細い路地の先には道に覆い被さるような大きな岩。
この岩の上には大きなガジュマルの木もあり、神聖な雰囲気が満々なので、身をかがめて神妙に岩の下をくぐり抜けます。

サンゴを使った古い石垣やテーブルサンゴをそのまま積み上げた石塀も、海と共に暮らす人々の生活の風景です。
高台から見る海と路地-佐良浜集落
高台から見る海と路地の風景

急な階段を登りきると、路地の先に海を望む眺望が広がります。
ハードな道のりのあとでも、この景色を見ると一気に疲れも吹き飛んでしまいます。

見晴らしのいい高台や路地の脇には手作りの簡易ベンチや椅子が置いてあり、海を見ながらまったりと過ごしたり、通りがかった近所の人とゆんたくをしたりする場所になっているようです。

佐良浜集落には坂や階段などの上下移動だけでなく、左右にも民家と民家のほんのわずかな隙間に路地道があり、実際通っていいのか迷うような道もあります。
路地の脇や民家の庭には季節の花々が咲き、貝殻の飾り物に漁師町らしさを感じます。

路地を歩いていてよく目にするのが「消火ホース格納箱」と書かれた赤い箱と消火栓。
集落内の路地は車が入れず消防車ももちろん無理なので、火事になった時にはこれらが頼みの綱となります。

写真を振り返ると(2015年から2024年撮影)、現在では空き家になってしまった家や倒壊したり、すでに更地になってしまった所も多く見受けられます。
生活するのに楽ではない集落だとは思いますが、何とかその魅力溢れる町並みを残していってほしいものです。