野原マストリャー-宮古島の十五夜豊年祭-

きりっと引き締まる静止のポーズ-野原マストリャー
祭りのはじまり

旧暦8月15日の十五夜にあわせて宮古島各地で行われる豊年祭。
野原では勇壮な棒踊りで知られる「マストリャー」(市の無形民俗文化財と国選択無形民俗文化財に指定)が開催されました。

野原の集落には「子(ネ)組」「寅(トラ)組」「午(ウマ)組」「申(サル)組」の4つのマスムトゥ(升元:貢租を集めた場所)があり、夕方からそれぞれのゆかりのマスムトゥに集まって、宴会が行われます。
満月がのぼり煌々とあたりを照らす頃、演者たちが組ごとに公民館へと向かいます。

午後9時半、鐘の音とともに旗を掲げて最初に公民館にやってきたのは「申(サル)組」。
その後「寅(トラ)組」、「午(ウマ)組」と続き、さらに時間をおいてマイクで急かされつつ最後の「子(ネ)組」と女性たちが入場。

午後10時を回る頃、いよいよ演舞が始まりました。

棒を掲げた男性たちが円を描くように行進し、勇ましい踊りを披露。
くば扇、四つ竹を手にした女性たちは、その輪から少し離れた場所で隊列を組んでさざなみのように静かに舞い続けます。
天に力強く突き上げるこぶし-野原マストリャー
勇ましいポーズ

鐘と横笛に導かれて踊る合間には、勇ましい掛け声とともにこぶしを力強く天に突き出し、歌舞伎の「見得」のように全員が一斉に動きを止めてポーズ。

あたりにきりっとした緊張感が走ります。

激しい動きの合間に挟まれる静寂のシーン。

動と静が絶妙に入り混じって、なんとも印象深いシーンです。
裸足で跳ね回る演者たち-野原マストリャー
躍動感溢れる踊り

棒を振りかざして躍動感溢れる動きを見せる演者たち。

よく見ると、全員裸足。

飛んだり跳ねたり、芝生の上を掛け声をあげながら所狭しと動き回ります。
迫力満点の打ち合い

一番の見せ場は5人1組での打ち合い。

真ん中に入った1人が他の4人が打ち下ろす棒を中腰で掲げた棒で受け止めます。
あたりには勇ましい掛け声と棒の打ち合う音が響き渡ります。

最後は男性と女性がひとつの大きな輪になり、全員で踊るクイチャー。
子供も輪に加わって賑やかに祭りを締めくくりました。

17~19世紀に宮古島では琉球王朝により「人頭税」という過酷な税の取り立てが続いていましたが、この税を完納した喜びと、翌年の五穀豊穣を祈願するために始まった伝統行事だそうです。

重税に苦しんでいた島人が棒を振って踊る棒踊り。
棒踊りには悪霊や疫病を棒で討ち払う意味合いもあるそうですが、本当に打ち払いたかったのは重税や役人だったのかも、、、

初めてマストリャーを見たのは2006年。
あの時会場の芝生を駆け回っていた子供達が時を経て今、踊りの輪に加わって伝統を引き継いでいる、、、
そう思うと、感慨深いものがあります。